2012年8月16日木曜日

半田晴久さん@日・米・中関係の対話を、尖閣ほか

半田晴久(深見東州)さんが、日・米・中の海軍専門家らと座談会において、尖閣問題などの諸問題を話合った内容が、産経新聞に掲載されていました。日米中の対話を求める半田晴久さんの立場に、共感を覚えました。



半田晴久を語る-半田晴久・深見東州より抜粋






自由な海洋活動の保障確立を




アジア太平洋の海上安全保障と日・米・中関係 座談会









平成24年(2012年)8月8日 木曜日 産経新聞掲載



めざましい経済成長の波に乗り、アジア太平洋海域での急速な権益拡大を図り、海軍増強を進める中国。それに対し、日本や米国、東アジアの沿岸諸国は、同海域の安全保障を脅かすとして警戒感を強めている。米国が世界的な軍備再編で予算を見直し、逆に中国が海軍への予算を増やす中、近い将来、東アジアの海軍力のバランスはどう変化するのか、海上の安全保障は維持されるのか。日本・米国・中国の元海軍、海上自衛隊の指揮を執った方々にお集まりいただき、東アジア海域の安全保障に対する各国の基本姿勢や将来展望を聞いた。



出席者

モデレーター 半田晴久氏(NPO法人 世界協力開発機構総裁)

日本国際フォーラム理事。CSISパシフィックフォーラム理事、カンボジア王国政府顧問、在福岡カンボジア王国名誉領事、東南アジアテレビ局解説委員長。(株)たちばな出版代表取締役。



マイケル・マクデビット氏(米海軍分析センター上級フェロー)

退役海軍少将。空母戦略軍指令を含めて4度にわたり海上部隊の指揮を執る。米軍防衛省東アジア政策部長。CINCPAC戦略作戦政策部長。米国国防大学学長を経て現職。



香田洋二氏(海上自衛隊 退役海将)

護衛艦さわゆき艦長、護衛艦隊司令部幕僚長。第30代護衛艦隊司令官を経て、統合幕僚会議事務局長。佐世保地方総監。第36代自衛官隊司令官を歴任。2009年からハーバード大学・アジアセンターシニアフェロー。



楊毅氏(ヤン・イー。中国国防大学研究員)

退役海軍少将。駐米大使館付武官を経て、2010年中国国防大学戦略研究所長。現在、研究員。国家安全保障軍事戦略・国際政策の専門家。中国で最も影響力がある戦略思想家の一人。



ジャスティン・ゴールドマン氏(CSIS・ハンダフェロー)

米海兵隊第15次調査隊員としてアフガニスタン、パキスタンで勤務。西アフリカ顧問。ラジャラトラム大学軍事研究員としてシンガポール国軍大学および海軍勾当台額で指導に当たった。







深刻化する 東アジアの海洋問題




半田 近年、南シナ海・東シナ海などでの中国海軍の行動が、沿岸諸国に脅威となっている。まず米国海軍の立場から、基本的な考えをお聞きしたい。



マクデビット 北朝鮮問題を除き、全ての東アジアの安全保障問題は海洋問題で、海事・領土問題の性格を持っている。私的意見だが、米国とこの地域の同盟国にとって最も大きな問題は、東アジアにおける海軍力のバランスの変化だ。中国の防衛力が高まり、防衛線がさらに沖へ張り出せば、それに釣り合う、機動力に優れた安全保障を同盟国に提供することが米国の責任だ。同盟国との関係を理解する最も良い方法は、その責任を分担すること。私たちは「役割と任務」といい、端的にいえば日本は盾、米国は槍(やり)の役割を担う。



香田 中国の今後の海洋活動に非常に関心がある。中国は20年前に比べ、おそらく数十倍も海軍に投資しており、10~20年後には相当大きな力を持つだろう。そうなると今までのバランスは完全に崩れる。



半田 国益がぶつかったとき、軍事的バランスが取れてないとフェアな話合いができない。このままだと勢力逆転の可能性がある。2008年以降、新たな情勢の変化について、日米で政治的・軍事的対応が進んでいないことが懸念されるが。



マクデビット オバマ大統領は昨年11月、アジアに注目した軍事力の再バランス計画を発表。その軍事予算の増加率を減らす計画は、アジア以外の地域に適用されるとしている。しかし、今後の議会の動向や大統領選挙の展開により変化する可能性はある。



香田 日本の年間防衛予算は500億㌦(約4兆円)。一方、米国は今後10年間で5000億㌦(約40兆円)の軍事予算を削減し、さらに議会からも同額の軍事予算削減を求められている。

 問題は、予算削減の中、日米でどう海洋での力のバランスを保つかだが、互いの新体制づくりの具体的な話合いがなされていないし、調整するメカニズムがないことが一番の問題だ。








増強する中国海軍




半田 海軍力を増強する中国海軍についてお話しいただきたい。



 中国の対外貿易による経済発展に、海の安全保障は不可欠。海軍力の増強は自国防衛の権利を行使するものだ。中国海軍は日本や米国に比べて遅れており、急速な成長ゆえに脅威と映るのだろう。われわれ3ヵ国の任務は海軍大国として協力関係をつくることで、競争ではない。大切なのは能力ではなく、それをいかに、どのような意図で使うかだ。



半田 私は中国の大学も卒要したので中国人の思考も理解してるつもりだ。しかし海軍増強に関して、中国と日本や欧米の理解の間にはかなりギャップがあるのでは。



 中国国内は問題が山積みだし、東シナ海などでの中国の行動について、国民は政府は弱腰だと捉えている。この落差は不自然なほど大きい。他国とコミュニケーションを取り、互いの意図が明確になれば安心するのではないか。



半田 中国政府・海軍が国民の支持を得られるように、国民に対する啓発活動が必要ではないか。日本にとっては、中国の何が脅威か。



香田 中国の海洋での行動を、周辺諸国は高圧的に感じている。ある意味、意図は一晩で変わる。日本が一番心配なのは、中国の<能力増強×意図>の将来像が分からないこと。今後、話合いで信頼感をつくっていくことが重要だ。








「A2/AD」と「ASB」




半田 米軍は、南シナ海沿岸の友好国の海軍力も含めて実行能力のバランスを取る外交戦略「CARAT(Cooperation Afloat Readiness and Training)」を展開している。



マクデビット 「CARAT」はそれなりの効果を挙げているが、主権が絡むとナショナリズムが頭をもたげる。軍事力が増せば緊張関係が変化し、意図も変化するかもしれない。だから米国は長い時間をかけ、アジア諸国の関与を促し、協力的な態度を習慣として中国に培ってもらおうと努力してきた。



半田 軍事的安全保障の大事な鍵となるのが「A2/AD(Anti-Access/Area Denial)」と「ASB(Air Sea Battle)」。「A2/AD」は米国を中心とする海洋戦略グループが、中国の国防戦略を想定したもので、「A2/AD」を空軍・海軍の攻撃能力を総合して突破する戦略が「ASB」だ。この軍事的パワーバランスをどう考えるか。



香田 中国がアジアで影響力を行使するためにつくられたのが、安全保障戦略の書くとなる「A2/AD of the USA」だと推測する。米国は第2次大戦以降、航空戦略を有効に使った。今後、米国の能力を最大限に発揮できる鍵となるのは、世界1位の力を持つ空軍・海軍をいかにうまく使うかで、それが中国の「A2/AD」に対する米国の一つの回答だろう。








日米中の協力こそ 相互の利益




半田 中国は米国を、米国は中国をどう見ているのか。



 中・米・日3ヵ国が相互に戦うなら、そこに戦勝国はなく、みな敗者となる。われわれの安全保障関係は、協力関係あってこそ互いに利益がある。中国は防衛能力を強化してきたが、西太平洋から米国を追い払う意図はないし、積極的・建設的な活動を望んでいる。日米は強力になった中国を受け入れ、中国は増強した軍事力にふさわしい正しい行動で応える。この両方向の受け入れが重要だ。長期的には、われわれの行動でわかっていただけるはずだ。



マクデビット 中国に米国を排除する意図はないだろうが、防衛能力の強化も事実。軍事力が向上したら、その意図も変化しはしないか。その備えも必要だ。



ゴールドマン 海兵隊としてイラクやアフガニスタンで従軍した経験がある。近年、米国防総省は予防行動の価値を強調するようになった。アセアン同盟国に対し、多国間会議を開催したことにも示されている。わずかな予防貢献で、本格的な戦闘を防げれば大きな効果がある。米国がアジアにおいて穏やかな状況をつくりだす役割を長年続けたから、アジアの大成功があった。引き続きその役割を継続するのがわれわれの務めだろう。



半田 海軍トップの皆さんは実に友好的だが、日中同士の対話が十分になされていないのが一つのポイントだ。友好的に対話できれば敵対意識も弱まる、そういう状況が、太平洋地域の安全保障維持に重要だ。








尖閣諸島問題を どう考えるか




半田 尖閣諸島問題が日中間の大問題にならないよう、双方の努力が必要だと思うが。



香田 日本政府は、「尖閣諸島については、日中間に領土問題は存在しない」が公式的立場。一方で、中国が1970年代以降、尖閣領有を強硬に主張し始めたのも事実だ。難しのは、建前の世界と現実の摩擦、この二つを同時に解決しなければならないこと。日本の立場は変えてはいけないが、重要なのは、現実的摩擦が紛争に拡大しないよう、あらゆる面から実行していくことだ。



半田 海洋法をはじめ国境での紛争に構える日本の法律や国際法が整備されていない面が多い。



 歴史的に釣魚島(尖閣諸島)が中国の領土であることは明らかだ。ただ今は3ヵ国とも景気回復などの困難に直面しており、これを重大問題にする時ではない。外国的・平和交渉で解決するしかないし、いかなる軍事力行使も問題外で、一部の政治家の駆け引きに利用されてはならない。



マクデビット 米国の立場は2点。まず尖閣諸島は現在、日本の行政的管理の下にあるということ。2点目は、米国は公式に日中どちらの側にも立たないということ。「賢明な国家の指導者が、問題をうまく管理、制御してくれることを望む」というのが答えだ。








太平洋地域の 安全のために




半田 歴史的に、尖閣諸島が日本の領土あることは明らかですが、資源さえなければ何の問題もなかった。最後に皆さんの意見を。



ゴールドマン 海洋問題において今後米海兵隊が果たすことができる役割だが、一つは自衛隊と合同訓練を行い、西太平洋に有事のシナリオが展開しそうな場合は、より機敏に準備を整え、脅威を防ぐための強力を行うこと。中国がもし現状を変えたいと考えるなら、その意志決定に大きな影響力を与える価値ある方法だ。今後は協力できる分野、信頼欠如してる分野を見つけ、その克服方法を考える必要がある。多国間の合同軍事演習が増えているのは良い傾向で、米軍が参加する演習を中国は注意深く観察している。

 結局、海には人々を自然と結びつける性格があり、それこそがわれわれの最後の希望だ。



 この地域は地政学的にも重大な変化の時を迎えており、当事国の中・米・日は協力的なパートナーシップを構築すべきだ。協力は全ての人に恩恵をもたらし、対立は全ての人を苦しめる。



香田 中国の規範をわれわれが長年築き上げてきた国連海洋法条約との間に、時に大きなギャップがありダブルスタンダードになってきている。特に国際法の適用について、中国がどう解釈するのかがよく分からない。軍事予算だけでなく、ソフトや運用、意図など不明な点をどう詰めていくのかだと思う。



マクデビット 米国は東アジアで積極的に関与し続けるだろう。米軍の前方展開能力の維持は、平和と安定をもたらし、それは経済成長を促し、経済成長は米・日・中の国益になる。少なくとも日米安全保障関係に関しては最善を期待し、最悪に備えるだろう。



半田 太平洋地域の安全保障は、実は身近なことに直結している。今回、海軍の専門家の話を通して、海洋安全保障に対する理解が深まったことと思う。











ESTABLISHING THE SECURITY OF FREE MARITAIME ACTIVITIES









2012年8月13日 THE JAPAN TIMES 意見広告英語版